行雲流水~きららのブログ

好きな本のことを中心に、日々の想いを書いてみる

「万葉集に出会う」

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 「万葉集に出会う」大谷雅夫著/岩波新書 

万葉集と言えば、中学や高校のときに教わった歌をひとつくらいは覚えていませんか。私は大学でも教わったけれども、実は大して記憶にない。こんなの日本語じゃねぇよといような生煮えの言葉づかい。防人たちは「妻」の歌ばかりの作りやがって、夫婦円満なんかつまんねぇわ。ドロドロ恋愛に苦しんでいた平安時代の歌のほうが私には共感できる。

 私の子供じみた理解はともかく、後世の読み方を検証する章では、特にあの有名な「東の野にかぎろひの立つ見えて かへり見すれば月かたぶきぬ」という・・・東に朝焼けで西のほうを見ると月が沈みますって? それのどこが面白いんかい超ツマンネーと思ってた歌が、なんとこんなカッコいい歌だったとは!! いっぺんで好きになりましたよ。

 別に国文学のことなんか勉強していなくても理解できますし、文法についての解説もあるけどそこは読み飛ばして全然オッケーだし(私は文法のこと考えると眠くなって頭がこんがらがるので読み飛ばした)誰でも楽しめる本。特にこの「はじめに」は必ず読んでほしい。ふだん読み飛ばすことも多い「はじめに」だけど、こんなに面白いのは初めてだった。万葉集ファンのエピソードが何人か出てきて興味深い。そういう人たちと親しくなれた気がするのも文学の効用。

 そして、この本全体の語り口がとても優しくてわかりやすくて、いい。こんな先生に教わってみたかった。万葉集を好きになること間違いなし。

 今40年の時を経て「再び出会う万葉集」は深く、心に沁みわたる。