先日、部屋の掃除をしているときだったか、ふと、母に面会したいと思った。特に何かがあったわけではない、平凡な昼下がりだった。
母は五年前に亡くなっているのでもちろん会えないわけだけれど、元気な頃はよく電話をかけていたし、亡くなる前もしょっちゅう病院に会いに行っていた。
ほんの5分でいい、顔を見て「元気?」と言うだけでいい。たったそれだけのことができないということが、人が死んでしまうということなんだね。
「はてしない物語」ミヒャエル・エンデ/岩波書店
ファンタジーって全く読んだことがなかったけど、こんなに面白いものとは思わなかった。次から次に展開する場面、全く予想がつかない。すべては何かを暗示し、深い意味が隠されている。
そして、読者は主人公とともにページをめくり、二度と会えない人に出会う。それこそが人生なんだよね。最後のページを閉じるとき、この物語の世界と別れることが心底辛くなって、涙が出た。