行雲流水~きららのブログ

好きな本のことを中心に、日々の想いを書いてみる

マスコミを罵る人たち

私くらいの年代の男性たちが口を極めてマスコミを罵っているのをよく耳にする。私は内心「いまさら」とバカにしている。今頃罵っている人たちはこれまでマスコミが書いていることをそのまま信じていたのでしょう? まずそこを認めてほしい。「自分は今までマスコミの書いていることをそのまま信じていました。それ以外のルポライターなどの労作は知らずに生きてきました」と。

太平洋戦争の頃、マスコミが国の宣伝機関となって国民に「いけいけドンドン」と戦争に駆り立てたということを知ったのは私もほんの十数年の間のことだ。驚いた。マスコミというのは、国の宣伝機関にすぎないのか。組織というものは普通の企業でもマスコミでも営利を追求する以上国の方針に逆らえないし取引先に配慮する。そのためには国にお追従して生きていくしかないのだろう。

「私の中の日本軍」(山本七平著/文春学藝ライブラリー) には著者の見聞きした旧日本陸軍の実態、そしてマスコミが新聞に発表した「百人斬り」記事への反論が丹念に書かれている。丹念過ぎてしつこいけれども反論だから仕方ない。それ以外にもさまざまな興味深いエピソードで綴られる。ご自身のことも赤裸々に書いておられる。普通の戦記だと恐らく「死んだ戦友や上官に配慮してここまでは書けない」という部分だ。

昔も今もそうだが、書いてしまったことは「真実」と受け取られても仕方がない。というか普通の人は真実だと思うだろう。私だって四十歳近くなって趣味で模型を作り始めて歴史の本をひもとくまでは「自虐史観的な考え方」であり、憲法と矛盾しているので自衛隊は違憲でありいらないと思っていた。しかしそれは何も本を読んでいなかったからである。原発や公害問題などの社会問題に関しては十代の頃からある程度の興味があり本も読んでいたが。マスコミやテレビがそれらの社会問題を掘り下げて追及しているとは思えなかった。

本当に読むべき本は何なのか、真実を書いているのは誰なのか、真実はどこにあるのか。自分で考えながら読まないと単に本に騙されることになりかねない。しかし自分で考えるということの難しさよ。これこそいちばん頭を使うことじゃないかと思う。

「日本を破滅させたのは虚報なのだ」そして虚報により本来あるはずの情報が見えなくなるのがいちばん恐ろしいことなのだと著者は言う。

耳をすまし目をこらし脳を最大限に回転させねば。マスコミを罵ってるヒマなんか私にはない。