行雲流水~きららのブログ

好きな本のことを中心に、日々の想いを書いてみる

働くってなんだろう

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 主婦をしていると職業の欄には「無職」と書くことになる。えっ私働いてないの? 家事や育児を毎日してるよね。

 仕事と言う言葉は日本ではお金をいただく仕事ということになっている。お金をもらえない仕事は仕事ではないのだ。「仕事ならもっとするけどね」という言い方もする。どういうことかというと、仕事ならもっと力を入れて徹底的にするということなのだが、仕事じゃないことは手を抜いて適当にやればよいという意味である。仕事だからきちんとやって仕事じゃないことは手を抜くよ。それが日本人の生き方である。

 若い頃、これからはコンピュータの時代だと言われていた。毎日朝から晩まで働くのではなく、コンピュータが人間を楽にさせてくれて、半日働いたら仕事は終わりになるかと思っていた。

 しかし現実は甘くなかった。というかコンピュータはちっとも私たちに抜本的な楽をさせてくれていない。相変わらず一日中仕事をしないといけないし、フランス人みたいな長期バカンスからも程遠い。そして60歳とか65歳になると「ハイ定年よ」と勝手に首を斬られる。

 「働くというのは自分が生活の糧を得るため」というなら、犯罪をしたり博打をするのも仕事ではないか。面白くもない灰色の毎日で他人にこき使われて自分の楽しみもなく家族に搾り取られる、それも仕事だ。

 でも私たちはうすうす気づいていないだろうか、目に見えない心のやりとり、対価は発生しない日々の活動・・・そういうことの重みを。でもそれらはお金で計れないので大きな声で「これは仕事と同じくらい価値がある」と誰も言えない。仕事という名前はないけれども同じくらいの価値がある、と誰も言えない。お金だけで計ることの限界を、本当は私たちだってうすうす知っている。でもそれをちゃんと言える人は少ない。

 

※今回の芋づる式読書は、「どっちの勝ち?」(みすず書房)→「働くことの人類学」(黒鳥社)